2026-09-06

犬の唇・口のまわりのできもの。様子を見てよいものと、早めに調べたいもの

「顔をなでていて、唇のふちに小さな盛り上がりを見つけました」「おやつをあげるときに、口の端が赤くなっているのに気づきました」。犬の唇や口のまわりのできものは、こうしたふとした場面で見つかることがほとんどです。

唇と口のまわりは、毛の生えた皮膚と、口の中の粘膜がつながっている場所です。そのため、皮膚にできるものと、粘膜にできるものの両方が出てきます。ウイルスによるイボのように時間がたてば小さくなっていくものもあれば、早めに調べておきたいものもあります。

見た目や手ざわりだけで良性か悪性かを決めることはできませんが、「どんな種類のものがあるのか」と「どこを見ておけばよいのか」を知っておくと、あわてずに受診の判断ができます。

唇・口のまわりにできるものの主な種類

若い犬に多い、イボのようなもの

口の中や唇のふちに、表面がカリフラワーのようにでこぼこした白っぽいイボができることがあります。犬のパピローマウイルスによる口腔乳頭腫です。若い犬に多く、一度に何個もできることがあります。

多くは体の免疫がはたらいて自然に小さくなっていきます。報告では、数週間から3か月ほどで消えることが多い一方で、それより長く残るものもあります。数が増えて食べにくそうにしているときや、何か月たっても変わらないときは、一度診せていただくほうが安心です。

もうひとつ、若い犬に多いものに皮膚組織球腫があります。赤くドーム状に盛り上がった、つるっとしたできもので、急に大きくなるのが特徴です。3歳以下の犬に多く報告されていて、こちらも数週間から数か月で自然に小さくなっていくことが知られています。

ただし、「若い犬だから乳頭腫か組織球腫だろう」と見た目だけで決めてしまうのは危険です。経過を見る場合でも、いつまでに変化がなければ検査に進むのかを決めておくことをおすすめしています。

炎症や感染によるもの

唇のたるみが重なっている犬種では、そのひだの中がむれて皮膚炎を起こすことがあります。赤みとにおいが同時に出てくるのが手がかりになります。

あごや下唇のあたりに、ニキビのような赤いぶつぶつが出ることもあります。若い短毛の犬に見られる毛包の炎症です。

歯の根に炎症が起きて、その上の頬や唇の下がぷっくりと腫れてくることもあります。この場合はできものではなく歯の問題ですので、歯科・口腔外科のページもあわせてご覧ください。

急に唇や顔全体がふくれてきたときは、虫に刺されたときやアレルギー反応のことがあります。顔つきが変わるほど腫れているとき、じんましんが出ているとき、呼吸が苦しそうなときは、様子を見ずにご連絡ください。

腫瘍

唇の毛が生えている部分にできる黒いできものには、良性のメラノサイトーマが多いことが知られています。一方、歯ぐきや頬の粘膜、唇の内側の粘膜にできるメラノーマは悪性度が高く、犬の口の中にできる悪性腫瘍としてはもっとも多いものです。同じ「黒いできもの」でも、毛の生えた皮膚側か、粘膜側かで意味が変わってきます。くわしくは犬の口腔内メラノーマのページで解説しています。

このほか、口のまわりにできる腫瘍には、扁平上皮癌、線維肉腫、肥満細胞腫などがあります。歯ぐきには、エプリスと呼ばれる良性の腫瘍もよく見られます。

黒いからといって、腫瘍とは限りません

犬の唇や歯ぐきが黒っぽいことは、めずらしくありません。犬種や個体によって生まれつき色素が濃く、年齢とともに黒い部分が増えることもあります。平らで盛り上がりがなく、長いあいだほとんど変わらないものは、正常な色素沈着であることが多いです。

見ていただきたいのは、色よりも「形」と「変化の速さ」です。

早めに調べたほうがよいサイン

  • 数週間のうちに目に見えて大きくなってきた
  • 表面がくずれている、さわると出血する、出血をくり返す
  • 唇がめくれている、左右の形が変わってきた
  • 口のにおいが強くなった、よだれが増えた
  • 食べるのに時間がかかる、かたいものを避けるようになった
  • できものの近くの歯がぐらついている
  • 若い犬のイボのようなものが、数か月たっても小さくならない、または増えている

ひとつでも当てはまるときは、早めに動物病院でご相談ください。あてはまらない場合でも、写真を撮って大きさを記録しておいていただくと、次に見たときの比較がしやすくなります。

どのように調べるか

まず口の中と唇を観察して、できものの場所、大きさ、色、周囲の状態を確認します。口の奥や粘膜側は起きたままだと見えにくいことがあり、必要に応じて鎮静をかけてていねいに確認します。

次に、細い針を刺して細胞を採る細胞診検査を行います。体への負担が少なく、その場で方向性が見えることも多い検査です。ただし、細胞が十分に採れないことや、細胞診検査だけでは種類を決められないこともあります。その場合は、組織の一部または全体を切り取って調べる病理組織検査に進みます。

腫瘍が疑われるときは、あごの下のリンパ節や、レントゲン検査・CT検査で広がりを確認します。どこまで調べるかは、できものの様子と動物たちの状態を見ながらご相談して決めていきます。

様子を見るという選択について

すべてのできものをすぐに切除する必要はありません。若い犬の乳頭腫や組織球腫のように、時間の経過で小さくなっていくものもあります。

そのうえでお願いしたいのは、様子を見ると決めたときこそ、期限を決めておくことです。当院では「2週間後にもう一度見せてください」「大きさが変わらなければ1か月後に」といった形で、次に確認する日をお約束するようにしています。気づかないうちに大きくなっていた、という事態を避けるためです。

当院でできること

南大沢どうぶつ病院では、日本獣医がん学会 獣医腫瘍科認定医Ⅰ種の院長が、口のまわりのできものの診断と治療にあたっています。細胞診検査から病理組織検査、CT検査による広がりの評価、手術までを院内で進められます。

他の動物病院で説明を受けたうえで、あらためて意見を聞きたいというご相談も承っています。これまでの検査結果や画像をお持ちいただけると、よりくわしくお話しできます。

体のほかの場所にできたしこりについては、犬猫の体表部のしこり(腫瘤)と腫瘍の違い犬の「しこり」は癌?もあわせてご覧ください。

SUPERVISED BY / 監修

この記事は、南大沢どうぶつ病院 院長・獣医師 保坂 創史(日本獣医がん学会 獣医腫瘍科認定医Ⅰ種)が監修しています。

公開日:2026-09-06

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