寒くなってくると、散歩の時間が短くなったり、暖かい部屋で寝ている時間が長くなったりします。ごはんの量がいつもどおりでも、動く量が減れば、体重は少しずつ増えていきます。
少しずつ増えた体重は、毎日いっしょにいるご家族ほど気づきにくいものです。1年前の体重と並べてみて、はじめて増えていたと分かることもあります。
先に結論をお伝えすると、太りすぎかどうかは体重の数字だけでは決まりません。胸をなでたときにあばら骨が指で分かり、上から見て腰にくびれがあれば、おおむね理想の体型です。 どちらも当てはまらない場合は、太りぎみかもしれません。このページでは、おうちでできる体型の見方と、太りすぎが体に与える影響、減量を始めるときの注意点、体重の変化と関係する甲状腺の病気をまとめます。
体重より「見た目と手ざわり」で体型をみます
ボディコンディションスコア(BCS)とは
同じ5kgでも、骨格の大きい猫と小柄な猫とでは意味が違います。そこで獣医療では、体についている脂肪の量を、見た目と触った感じで点数にする「ボディコンディションスコア(BCS)」を使います。
世界小動物獣医師会(WSAVA)の栄養ガイドラインでは9段階のスコアを使っていて、多くの犬猫にとっての目標は9段階の4〜5です。6〜9は「理想より多い」側で、数字が大きいほど脂肪が多い状態です。5段階で表す方法もあり、その場合は真ん中の3が理想です。病院や資料によって段階の数が違うので、点数を見るときは「何段階のうちの何点か」を確認してください。
ガイドラインには、理想の体型は飼い主さまの目には「やせすぎ」に見えることがある、とも書かれています。あばら骨が分かるくらいで、ちょうどよいのです。
おうちでできる3つのチェック
1. 胸を軽くなでて、あばら骨が指で分かるか
手のひらを胸の横にあて、力を入れずになでてみてください。理想の体型なら、薄い脂肪の下にあばら骨が1本ずつ触れます。強く押さないと分からない、または押しても分からない場合は、脂肪が厚くついています。
2. 上から見て、腰にくびれがあるか
立っているところを真上から見ます。あばら骨の後ろから腰にかけて、少し内側にくびれていれば理想です。胸からお尻までまっすぐの「ずん胴」や、お腹が横に張り出している場合は太りぎみです。
3. 横から見て、お腹のラインはどうか
犬では、横から見てお腹が胸より少し上がっている(後ろに向かって引き締まっている)のが理想です。お腹が胸と同じ高さか、下に垂れている場合は太りぎみです。
猫は、犬ほどお腹の引き上がりがはっきりしません。WSAVAの猫のスコアでは、理想の猫は「お腹の脂肪がわずか」な状態で、太るにつれてお腹が丸くなり、お腹の下側の脂肪(脂肪のかたまり)が目立ってきます。猫では、横から見てお腹が丸く張り出していないか、お腹の下側に脂肪のかたまりが目立たないかを見てください。上から見た腰のくびれ(2つめのチェック)は、猫でも同じように見られます。
長い毛の子は、必ず触って確かめる
長毛の犬猫や、冬毛でふっくらしている時期は、見た目だけでは体型が分かりません。ガイドラインでも、正確に判断するには触ることが欠かせないとされています。あばら骨・背骨・腰の骨を、手で確かめてください。
体重は同じ方法で、定期的に
体型のチェックとあわせて、体重を記録しておくと変化に気づきやすくなります。小型犬や猫は、ご家族が抱っこして体重計に乗り、ご自身の体重を引く方法でも構いません。毎回同じ体重計・同じ時間帯で測ると、比べやすくなります。
太りすぎで起こりやすいこと
関節への負担
体重が増えるほど、足腰の関節にかかる負担は大きくなります。犬では、肥満が変形性関節症と関係することが知られています。猫でも、太っている猫は足を引きずるなどで受診することが多いと報告されています。関節に痛みのある太った犬では、体重を6%ほど落としたあたりから歩き方の改善がみられたという研究もあります。
心臓や呼吸への負担
太った犬を調べた研究では、心臓の筋肉が厚くなる変化や、心臓が広がって血液をためる働き(拡張機能)の低下がみられ、減量によって心臓の壁の厚みが一部戻ったと報告されています。また、体に脂肪が多くつくと呼吸の働きにも影響が出て、減量で改善することが分かっています。もともと心臓や気管、呼吸の病気がある子では、体重の管理がより大切になります。
猫の糖尿病
猫では、肥満が糖尿病の大きな危険因子です。アメリカで約1,500頭の猫を4年半追った研究では、肥満の猫は理想体型の猫に比べて、糖尿病になる割合が約3.9倍でした。
麻酔や手術のとき
腹腔鏡での避妊手術を調べた研究では、太った犬では手術時間が約2割長くなっていました。避妊・去勢手術や歯の処置など、いずれ麻酔をかける予定がある場合は、早めに体重を整えておくと安心です。
寿命との関係
北米の動物病院に通う中年期(6.5〜8.5歳)の犬、約5万頭を調べた研究では、調べた12の犬種すべてで、太りぎみの犬は理想体型の犬より寿命が短い傾向がありました。差がいちばん大きかったヨークシャー・テリアでは、中央値で約2.5年の差がありました。
ただし、これは「太っていた犬ほど寿命が短かった」という観察で、減量すれば必ず寿命が延びると証明されたわけではありません。それでも、減量によって歩き方や呼吸の状態、血糖を下げるホルモン(インスリン)の効きが良くなることは確かめられています。
減量を始めるときの注意
ごはんを急に減らさない
体重を落としたいからといって、ごはんを急に半分にしたり、絶食させたりするのはやめてください。いつものフードの量を大きく減らすだけでは、たんぱく質やビタミンが足りなくなることがあります。犬では、速く体重を落とした子ほど、そのあと体重が戻りやすかったという研究もあります。
特に猫は、急に食べなくなると肝臓をいためます
猫は、食べる量が急に減ったり、何日も食べない状態が続いたりすると、体の脂肪が一気に肝臓に運ばれて「肝リピドーシス(脂肪肝)」になることがあります。命にかかわることもある病気で、太っている猫ほど注意が必要です。
ごはんを替えたら食べなくなった、減らしたら食べなくなった、という場合は、様子を見ずにご相談ください。
目標は「ゆっくり」
家庭で暮らす犬猫の減量では、1週間に体重の0.5〜1%ほどのペースで進むことが多いと報告されています。5kgの猫なら1週間に25〜50g、10kgの犬なら50〜100gほどです。数字にすると小さく見えますが、それで十分です。
減量は、続けていくうちにペースが落ちてくるのが普通です。体重が減らなくなってきたら、量を見直す時期です。
ごはんは「はかり」で量る
計量カップで量ったドライフードは、思っているより量がばらつきます。実際に計量カップで量ってもらった研究では、狙った量より18%少ない場合から、80%多い場合までありました。キッチンスケールでグラム単位で量ると、毎日の量が安定します。
おやつは1日の量の1割まで
WSAVAのガイドラインでは、おやつや人の食べ物が1日のカロリーの10%を超えている場合を、食事を見直すべきサインとしています。おやつをあげるなら、その分ごはんを減らすか、1日分のフードの中から取り分けてあげる方法もあります。
減量用の療法食
減量用の療法食は、カロリーを抑えながら、たんぱく質やビタミン・ミネラルが不足しないように作られています。ふつうのフードの量を減らすだけだと栄養が足りなくなることがあるため、しっかり減量する場合は療法食を使うことを検討します。合うかどうかは体の状態によりますので、診察でご相談ください。
減ったあとも続ける
減量に成功した犬猫の約半数で、そのあと体重がまた増えたという報告があります。目標の体重になったあとも、体型のチェックと体重の記録を続けてください。
体重の変化と甲状腺の病気
体重の増え方・減り方の裏に、甲状腺の病気が隠れていることがあります。犬と猫とで、向きが逆になるのが特徴です。
犬:甲状腺機能低下症で太りやすくなる
犬の甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンが足りなくなり、体の代謝が落ちる病気です。4〜10歳の、中型から大型の犬に多くみられます。
- ごはんの量は増えていないのに、体重が増える
- 元気がない、散歩や運動をいやがる
- 寒がって、暖かい場所から離れない
- 毛が薄くなる、抜けたあと生えてきにくい
診断は、血液検査で甲状腺ホルモン(T4)を測り、症状とあわせて判断します。T4は甲状腺以外の病気でも下がることがあるため、低い値が1回出ただけでは決まらず、必要に応じて外部の検査センターで追加のホルモン検査を行います。治療は甲状腺ホルモンの飲み薬で、多くの場合、生涯続けます。
こうした様子があって太ってきた場合は、ごはんを減らす前に、一度調べておくと安心です。
猫:甲状腺機能亢進症は「よく食べるのにやせる」
猫では逆に、甲状腺ホルモンが出すぎる「甲状腺機能亢進症」が、中高齢(おおむね8歳以上)の猫によくみられます。体の代謝が上がりすぎるため、次のような変化が出てきます。
- よく食べているのに、体重が減る
- 水をよく飲み、尿の量が増える
- 吐くことが増える
- 落ち着きがない、夜に鳴く
気をつけたいのは、太っていた猫がやせてきたときです。ダイエットをしていないのにやせてきた、減量中に思っていたより速く体重が落ちている、しかも食欲はむしろ増えている。こうした場合は「ダイエットがうまくいった」と思わずに、一度ご相談ください。
診断の中心は、血液検査での甲状腺ホルモン(T4)の測定です。当院では院内で測れます。病気があってもT4が正常範囲に収まる猫が5〜10%ほどいるため、症状が続く場合は再検査や追加の検査を組み合わせます。
治療は、ホルモンがつくられるのを抑える飲み薬、ヨウ素を制限した療法食、手術から、猫の状態やご家庭での続けやすさに合わせて選びます。放射性ヨウ素を使う治療は、実施できる施設が限られます。ホルモンが落ち着くと、それまで隠れていた慢性腎臓病が表に出てくることがあるため、腎臓の値を見ながら進めます。
くわしくは猫の甲状腺機能亢進症のページと、コラム「食べているのに痩せていく」シニア猫で疑うべきことをご覧ください。甲状腺以外の原因も含めて、猫がやせてくる理由は高齢猫の体重減少のページでまとめています。
こんなときは受診を
- 体型チェックで、あばら骨が分からない・腰のくびれがない
- 1年前と比べて、体重がはっきり増えている
- ごはんの量は変わらないのに、体重が増え続けている
- 太ってきてから、散歩をいやがる・段差を上らない・息が荒い
- 減量のためにごはんを減らしたら、食べなくなった(特に猫)
- 猫が、ダイエットをしていないのにやせてきた(減量中なら、思っていたより速くやせてきた)
当院でできること
診察では、体重を測り、体型を見て触って確認し、今の体型が9段階のどのあたりかをお伝えします。そのうえで、年齢や持病、生活のしかたに合わせて、目標にする体重と1日のごはんの量の目安を一緒に考えます。
太り方によっては、甲状腺ホルモンの測定など、血液検査で体の中の状態を確認することもあります。健康診断のついでに体型を相談していただくこともできます。健診の内容は健康診断のページをご覧ください。
減量は数か月かかることが多いので、途中で体重を確認しながら、ごはんの量を調整していきます。「少し太ったかも」と感じた段階でご相談いただければ、無理のない方法で進められます。
よくあるご質問
うちの子が太っているかどうか、どうやって見分けますか?
体重の数字よりも、体型で判断します。胸を軽くなでてあばら骨が指で分かるか、上から見て腰にくびれがあるか、横から見てお腹のラインはどうか(犬はお腹が少し上がっているか、猫はお腹が丸く張り出していないか)を確認してください。あばら骨が分からない、くびれがない場合は、太りぎみかもしれません。
ボディコンディションスコア(BCS)の理想は何点ですか?
世界小動物獣医師会(WSAVA)のガイドラインで使われている9段階のスコアでは、多くの犬猫にとって4〜5が目標です。5段階のスコアでは3が理想にあたります。資料によって段階の数が違うため、「何段階のうちの何点か」を確認してください。
太りすぎると、どんな病気になりやすいですか?
関節への負担が大きくなり、犬では変形性関節症との関係が知られています。猫では肥満が糖尿病の大きな危険因子で、肥満の猫は糖尿病になる割合が約3.9倍という報告があります。心臓や呼吸への負担にもつながり、犬の腹腔鏡での避妊手術では、太った犬で手術時間が長くなったという報告もあります。犬では、太りぎみの犬ほど寿命が短い傾向も報告されています。
猫のごはんを減らすときに気をつけることは?
急に大きく減らしたり、食べない状態を続けたりしないことです。猫は食べる量が急に減ると、肝リピドーシス(脂肪肝)という命にかかわる肝臓の病気になることがあり、太っている猫ほど注意が必要です。減らしたら食べなくなった場合は、様子を見ずにご相談ください。
どのくらいのペースで体重を落とせばいいですか?
家庭で暮らす犬猫の減量では、1週間に体重の0.5〜1%ほどのペースで進むことが多いと報告されています。5kgの猫なら1週間に25〜50gほどです。急いで落とすより、ゆっくり確実に進めて、減ったあとの体重を保つことのほうが大切です。
太っていた猫がやせてきました。ダイエットが成功したのでしょうか?
ダイエットをしていないのにやせてきた場合や、減量中でも思っていたより速く体重が落ちている場合は、病気のサインかもしれません。特に中高齢の猫で、よく食べるのにやせる、水をよく飲む、吐く、落ち着きがないといった様子があれば、甲状腺機能亢進症を疑って血液検査で甲状腺ホルモン(T4)を測ります。糖尿病や慢性腎臓病などでやせることもあるため、一度ご相談ください。
おやつはやめたほうがいいですか?
完全にやめる必要はありません。目安は、おやつや人の食べ物を1日のカロリーの1割までにすることです。おやつをあげる日は、その分ごはんを少し減らすか、1日分のフードの中から取り分けてあげる方法もあります。
SUPERVISED BY / 監修
この記事は、南大沢どうぶつ病院 院長・獣医師 保坂 創史(日本獣医がん学会 獣医腫瘍科認定医Ⅰ種)が監修しています。
公開日:2026-10-26