Q&A

腫瘍科Q&A

犬や猫のがん(腫瘍)と向き合うとき、飼い主様の不安はとても大きいものです。ここでは、当院の腫瘍科で実際によくいただくご質問をまとめました。

腫瘍診療では、病気の種類、進行度、動物の体調、ご家族の考え方によって最適な選択が変わります。そのため、以下の内容は一般的な考え方としてご覧いただき、実際の治療方針は個々の状態に合わせてご相談ください。

  • 腫瘍の基本について

  • 検査について

  • 手術について

  • 抗がん剤について

  • 予後・見通しについて

  • セカンドオピニオンについて

腫瘍の基本について

腫瘤(しゅりゅう)と腫瘍(しゅよう)は何が違うのですか?

A. 「腫瘤(しゅりゅう)」は、体にできた「かたまり・できもの」そのものを指す言葉で、良性か悪性かは問いません。炎症や膿がたまったもの、嚢胞(袋状のもの)、脂肪のかたまりなども腫瘤に含まれます。一方「腫瘍(しゅよう)」は、細胞が自律的に増え続けてできたかたまりを指し、良性腫瘍と悪性腫瘍(いわゆる「がん」)に分かれます。つまり、腫瘤という大きなくくりの中に腫瘍が含まれる関係です。触れる「しこり」が腫瘍かどうか、良性か悪性かは、見た目や手ざわりだけでは判断できないため、必要に応じて細胞診や病理検査で評価していきます。

しこりはすべて腫瘍ですか?

A. いいえ。しこりには、腫瘍のほかに炎症、感染、膿瘍、嚢胞、脂肪の増生などさまざまな原因があります。見た目や触った感じだけで判断することは難しいため、必要に応じて検査を行って評価することが大切です。

小さなしこりでもがんの可能性はありますか?

A. はい、あります。小さいから安心とは言えません。特に猫では小さなしこりでも悪性であることがあり、犬でも肥満細胞腫のように見た目だけでは判断しづらい腫瘍があります。

良性と悪性は触っただけでわかりますか?

A. 触診だけで正確に見分けることはできません。柔らかいしこりでも悪性のことがありますし、硬くても良性のことがあります。最終的には細胞診や病理検査で評価していきます。

高齢になるとがんは増えますか?

A. 一般的には、年齢とともに腫瘍は増える傾向があります。ただし若い動物でも発生する腫瘍はありますので、「若いから大丈夫」とは限りません。

腫瘍は予防できますか?

A. 完全に予防することは難しいですが、定期的な健康診断、体表のチェック、口の中や乳腺の確認など、早期発見につながる習慣はとても重要です。乳腺腫瘍では避妊時期が発生リスクに関係することもあります。

しこりがあるけれど元気なら様子を見てもいいですか?

A. 一概には言えません。しこりの性質によっては経過観察が可能な場合もありますが、まずは一度評価してから「様子を見る」が安全です。特に大きくなる、赤くなる、出血する、硬い、数が増える場合は早めの受診をおすすめします。

がんは痛みがありますか?

A. 腫瘍の種類や場所によって異なります。初期には痛みが目立たないこともありますが、進行すると痛み、違和感、食べづらさ、歩きづらさ、呼吸の苦しさなどにつながることがあります。

転移とは何ですか?

A. もとの腫瘍細胞が血液やリンパの流れに乗って、別の臓器やリンパ節などに広がることです。腫瘍の種類によって転移しやすさは異なります。

検査について

細胞診とは何ですか?

A. 細い針でしこりやリンパ節の細胞を採取し、顕微鏡で観察する検査です。比較的負担が少なく、短時間で行えることが多いため、腫瘍診断の入り口としてよく行います。

細胞診は痛いですか?

A. 一般的には注射と同程度の刺激で行えることが多いです。ただし部位や性格によっては保定や鎮静に配慮が必要なことがあります。

病理検査とは何ですか?

A. 手術や生検で採取した組織を詳しく調べる検査です。腫瘍の種類、良性・悪性、悪性度、切除の状態などをより正確に評価できます。

細胞診だけで確定診断できますか?

A. 腫瘍によっては細胞診で強く疑える場合がありますが、最終的な確定や悪性度評価には病理検査が必要なことも少なくありません。特に治療方針を決めるうえで組織学的評価が重要になることがあります。

リンパ腫ではどんな検査をしますか?

A. 一般的には細胞診、血液検査、画像検査を行い、必要に応じてPCR検査(クローナリティー検査)などを組み合わせます。炎症によるリンパ球増加と、腫瘍性増殖を見分けたい場面で有用です。

PCR検査(クローナリティー検査)とは何ですか?

A. リンパ球が単一クローンとして増えているかどうかを調べる検査です。リンパ腫では単クローン性がみられることがあり、細胞診だけで判断しにくいときの補助になります。

CT検査は必ず必要ですか?

A. 必ずではありません。腫瘍の種類や場所によって必要性が変わります。体表腫瘍では不要なこともありますし、鼻腔内腫瘍や肺転移評価、手術範囲の検討では有用なことがあります。

転移の検査は何をしますか?

A. 腫瘍の種類に応じて、レントゲン検査、超音波検査、リンパ節評価、CT検査などを行います。どこまで調べるかは病気の特徴と治療目的によって変わります。

検査結果はどれくらいでわかりますか?

A. 細胞診は当日ある程度評価できることがあります。病理検査は通常1週間〜2週間前後、外部検査の内容によってはそれ以上かかることもあります。

手術について

腫瘍は必ず手術した方がいいですか?

A. いいえ。手術が第一選択になる腫瘍もありますが、抗がん剤治療が中心になるもの、放射線治療が有効なもの、経過観察や緩和ケアが選択肢になるものもあります。診断を踏まえてご提案します。

手術だけで治ることはありますか?

A. はい、あります。特に早期に見つかった限局性腫瘍では、適切な切除によって良好な経過が期待できる場合があります。一方で、再発や転移を考慮して追加治療を検討することもあります。

手術はどこまで切るのですか?

A. 腫瘍の種類や部位によって異なります。腫瘍だけを小さく取ればよいわけではなく、周囲にどの程度広がっている可能性があるかを考えて切除範囲を決めます。特に肥満細胞腫などでは切除マージンが重要です。

高齢でも手術できますか?

A. 年齢だけで手術できないとは限りません。重要なのは、心臓・腎臓・呼吸器を含めた全身状態と、手術のメリット・負担のバランスです。

手術後は入院が必要ですか?

A. 手術の内容によります。日帰りに近いケースもあれば、数日入院が必要なケースもあります。術後管理や疼痛コントロールを重視して判断します。

腫瘍は再発しますか?

A. 腫瘍の種類、悪性度、切除状態によって異なります。再発を完全にゼロにはできませんが、適切な手術計画と術後評価によって再発リスクを把握していきます。

抗がん剤について

犬や猫でも抗がん剤治療をするのですか?

A. はい。リンパ腫、肥満細胞腫、血管肉腫、一部の乳腺腫瘍などで抗がん剤治療が選択肢になることがあります。腫瘍の種類ごとに位置づけは異なります。

抗がん剤は苦しい治療ですか?

A. 人の医療と比べて、犬猫ではQOLを強く重視して治療するのが一般的です。重い副作用を前提に最大量を使うのではなく、生活の質を保ちながら続けられる治療を目指します。

抗がん剤の副作用には何がありますか?

A. 食欲低下、嘔吐、下痢、元気低下、白血球減少などが代表的です。薬の種類によっては脱毛、膀胱炎、肝機能変化などに注意する場合もあります。

抗がん剤で毛は抜けますか?

A. 犬猫では人ほど目立つ脱毛が起こらないことが多いですが、犬種や薬剤によっては毛質の変化や局所的な脱毛がみられることがあります。

抗がん剤はずっと続けるのですか?

A. 腫瘍の種類や治療プロトコルによります。数か月単位で予定を組むこともあれば、反応や副作用を見ながら間隔を調整することもあります。

抗がん剤をしない選択はありますか?

A. はい、あります。すべての症例で抗がん剤が最善とは限りません。外科治療、緩和ケア、経過観察なども含めて、動物たちとご家族に合う方針を一緒に考えます。

抗がん剤だけお願いすることはできますか?

A. 症例によっては可能です。ただし、安全に治療を進めるため、これまでの検査結果や現在の状態を確認した上で判断します。

予後・見通しについて

がんは治りますか?

A. 腫瘍の種類や進行度によって異なります。根治を目指せる腫瘍もあれば、コントロールを目標にする腫瘍もあります。まずは「治るかどうか」だけでなく、「何を目標にする治療か」を整理することが大切です。

余命はどれくらいですか?

A. もっとも多いご質問の一つですが、腫瘍の種類、ステージ、治療反応性、全身状態で大きく変わるため、一律には言えません。統計としての見通しはお話できますが、実際の経過は個体差があります。

転移していたら治療はできませんか?

A. いいえ。転移があっても治療の意味がなくなるわけではありません。進行を抑える、症状を軽くする、生活の質を守る、といった目的で治療を行うことがあります。

治療しない場合はどうなりますか?

A. 腫瘍の種類によって進行の速さや症状の出方は異なります。治療しない選択をされる場合でも、痛みや食欲、呼吸、出血などを和らげる緩和ケアはとても重要です。

緩和ケアとは何ですか?

A. 腫瘍そのものをなくすことよりも、痛みや苦しさを減らし、動物たちが自分らしく過ごせる生活を支えることを目的とした治療です。治療しないことと同じではなく、積極的に快適さを守る医療です。

セカンドオピニオンについて

セカンドオピニオンは失礼ではありませんか?

A. いいえ。腫瘍治療は選択肢が複数あることも多く、別の意見を聞いて整理するのは自然なことです。VCAでも、セカンドオピニオンは現在の主治医を否定するものではなく、別の獣医師の意見を求める行為と説明されています。

紹介状がなくても相談できますか?

A. はい、可能です。紹介状があると経過を把握しやすいですが、必須ではありません。検査データや画像がある場合はお持ちいただくとより具体的にご相談できます。

他院の検査結果でも相談できますか?

A. はい。血液検査、画像、病理結果などがあれば拝見し、現在の状況整理に役立てます。

主治医を変えなくても相談できますか?

A. はい。セカンドオピニオン後に元の病院で治療を継続される方もいらっしゃいます。整理のための受診としてご利用いただけます。

まずは相談だけでも大丈夫ですか?

A. はい、大丈夫です。腫瘍診療では「すぐ治療を決める」ことより、「今の状況を正しく理解する」ことがとても大切です。まずは評価と整理からご相談ください。

SUPERVISED BY / 監修

このページは、南大沢どうぶつ病院 院長・獣医師 保坂 創史(日本獣医がん学会 獣医腫瘍科認定医Ⅰ種)が監修しています。

最終更新日:2026-06-25

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