DISEASE

犬の軟部組織肉腫

犬の軟部組織肉腫は、皮膚や皮下にできるしこりとして見つかることの多い腫瘍です。体幹や四肢の皮下に、いつの間にかふくらみができていることが多く、ゆっくりと大きくなっていきます。

多くの場合、痛みなどの症状が出にくいため、しばらく様子を見てしまうこともあります。しかしこの腫瘍は、境界がはっきりせず、周囲の組織にしみ込むように広がっていく性質があります。

見た目の大きさよりも、実際には広い範囲に広がっていることが少なくありません。そのため、しこりに気づいた段階で早めに評価しておくことが大切になります。

犬の軟部組織肉腫とは

軟部組織肉腫は、体の軟らかい組織から発生する悪性腫瘍をまとめて呼ぶ名前です。発生のもとになる組織には、線維組織、脂肪、末梢神経、筋肉などがあります。

これらの組織から生じた腫瘍は、性質が似ているため、まとめて軟部組織肉腫として扱われます。

多くは皮膚や皮下にでき、体幹や四肢に見つかることが多い腫瘍です。進行はゆっくりしていることが多く、数か月かけて少しずつ大きくなっていきます。

一方で、境界が不明瞭で、周囲の組織にしみ込むように広がる点が特徴です。この性質を局所浸潤といいます。そのため、手術で取り残しがあると、同じ場所に再発しやすくなります。

転移は比較的少ないとされています。ただし、悪性度を示すグレードが高いものでは、肺などへの転移のリスクが上がります。

犬の軟部組織肉腫の症状

初期は症状が乏しく、しこりだけが唯一のサインであることが多いです。大きくなるにつれて、次のような変化が見られることがあります。

  • 皮膚や皮下にできる、はっきりとしたしこり
  • しこりが数か月かけて少しずつ大きくなる
  • 大きくなった部分の違和感や気にするそぶり
  • しこり周囲の可動性の低下
  • できた場所によっては動きにくさや歩き方の変化

これらの症状は、ほかの腫瘍やできものでも見られます。しこりを見つけたときは、放置せずに一度診察を受けることをおすすめします。

犬の軟部組織肉腫の診断

診断では、まずしこりの性質を調べ、次に広がりやグレードを評価していきます。いくつかの検査を組み合わせて、全体像をつかんでいきます。

細胞診

細い針をしこりに刺して、細胞を少量採取して調べる検査です。体への負担が少なく、最初の目星をつけるために行います。

軟部組織肉腫では、細胞が採れにくいこともあり、細胞診だけで確定できない場合があります。その際は、次の生検に進みます。

生検・病理検査(グレード)

しこりの一部、または全体を採取して、組織として詳しく調べる検査です。これにより、軟部組織肉腫かどうかを確定できます。

あわせて、悪性度を示すグレードを評価します。グレードは、腫瘍の増え方や性質から判定します。グレードが高いものほど、再発や転移のリスクが高くなる傾向があります。

グレードは、治療方針を決めるうえで重要な情報になります。

画像検査

腫瘍がどこまで広がっているか、また転移がないかを調べます。しこりの範囲を把握するために、超音波検査やCT検査などを用います。

CT検査は、深い部分への広がりや周囲との位置関係を立体的に確認するのに役立ちます。転移の有無を調べる目的では、胸部の画像検査を行うことがあります。

これらの結果をもとに、手術で切除する範囲を設計していきます。

犬の軟部組織肉腫の治療

治療の中心は外科手術です。腫瘍の場所やグレード、広がりに応じて、放射線治療や抗がん剤を組み合わせます。

外科手術(広範囲切除)

軟部組織肉腫は、見た目の境界より広い範囲に広がっていることが多い腫瘍です。そのため、腫瘍の周囲に十分な正常組織をつけて、まとめて切除します。この余白を切除縁、またはマージンと呼びます。

十分なマージンを確保して切除できれば、再発のリスクを下げることができます。反対に、切除が不十分だと、同じ場所に再発しやすくなります。

切除する範囲をどのように設計するかが、その後の経過を大きく左右します。手術前の画像検査での評価が、ここで生きてきます。

放射線治療

腫瘍の場所によっては、十分なマージンを確保した切除が難しいことがあります。手足の先など、周囲に組織の余裕が少ない部位です。

このような場合や、手術で取り切れなかった場合には、放射線治療を組み合わせることがあります。残った腫瘍細胞に対して働きかけ、再発を抑える目的で行います。

抗がん剤

抗がん剤は、グレードの高い腫瘍や、転移のリスクが高いと考えられる場合に検討します。全身に作用する治療として、手術や放射線治療と組み合わせて用いることがあります。

適応や組み合わせは、腫瘍の状態によって変わります。個々の状況に応じて判断していきます。

予後

軟部組織肉腫の経過は、グレードと、最初の手術でどれだけしっかり切除できたかによって変わります。

グレードが低く、十分なマージンで切除できた場合には、良好な経過が期待できます。転移が比較的少ない腫瘍であることも、経過を考えるうえで前向きな点です。

一方で、グレードが高いものや、切除が不十分だった場合には、再発や転移のリスクが高くなります。最初の治療でしっかり対応することが、その後の経過につながります。

セカンドオピニオンについて

軟部組織肉腫は、切除する範囲の設計が経過を左右する腫瘍です。手術の方針について、別の視点からの意見を聞きたいと考える方もいらっしゃいます。

診断や治療方針に迷いがあるとき、セカンドオピニオンを受けることは自然な選択です。これまでの検査結果や画像があれば、それをもとにより具体的な相談ができます。

当院では、セカンドオピニオンにも対応しています。今の方針を確認したい、他の選択肢を知りたいという場合も、遠慮なくご相談ください。

犬の軟部組織肉腫でお悩みの方へ

しこりに気づいたときは、早めに評価しておくことが大切です。軟部組織肉腫は、最初の診断と手術の設計が、その後の経過を大きく左右します。

当院では、腫瘍科認定医による診断と治療を行っています。お気軽にご相談ください。

よくあるご質問

皮下にしこりを見つけました。すぐに受診したほうがよいですか?

軟部組織肉腫は、痛みが出にくいまましこりだけがゆっくり大きくなることが多い腫瘍です。しばらく様子を見てしまう方もいらっしゃいますが、この腫瘍は見た目の境界より広い範囲に広がっている性質があります。小さいうちのほうが評価も治療もしやすいので、しこりに気づいたら早めに一度診察を受けてください。

ゆっくり大きくなるしこりなら、良性のことが多いのでしょうか?

進行がゆっくりだから良性とは限りません。軟部組織肉腫も数か月かけて少しずつ大きくなることが多く、増え方だけで良性か悪性かを見分けることはできません。判断には細胞を調べる検査が必要ですので、大きくなる速さで自己判断せず、診察のうえで確かめることをおすすめします。

どんな検査で診断するのですか?

まず細い針でしこりの細胞を少量採る細胞診で目星をつけます。軟部組織肉腫は細胞が採れにくいことがあり、細胞診だけで確定できないときは、組織の一部を採る生検・病理検査で確定し、悪性度を示すグレードを調べます。あわせて、広がりや転移を見るために超音波検査やCT検査、胸部の画像検査を行うことがあります。

手術で大きく切除すると聞きました。なぜ広く取る必要があるのですか?

軟部組織肉腫は境界がはっきりせず、周囲の組織にしみ込むように広がるためです。見えているしこりだけを取ると、しみ込んだ部分が残り、同じ場所に再発しやすくなります。そこで腫瘍の周りに正常組織の余白(マージン)をつけてまとめて切除します。この余白を十分に確保できると、再発のリスクを下げられます。

手足の先など、大きく切除しにくい場所のときはどうするのですか?

手足の先のように周囲に組織の余裕が少ない部位では、十分なマージンを確保した切除が難しいことがあります。そうした場合や、手術で取り切れなかった場合には、残った腫瘍細胞に働きかける放射線治療を組み合わせることがあります。どの方法が適しているかは、腫瘍の場所やグレード、広がりを見て診察のうえでご説明します。

転移は多い腫瘍ですか?

軟部組織肉腫は、ほかの悪性腫瘍と比べると転移は比較的少ない一方、手術した場所に再び現れる局所再発が課題になりやすい腫瘍です。ただしグレードが高いものでは、肺などへの転移のリスクが上がります。転移のリスクが高いと考えられる場合には、全身に作用する抗がん剤を手術や放射線治療と組み合わせて検討することがあります。

再発したときはどう対応しますか?費用の目安も知りたいのですが、どのくらいですか?

再発は、最初の手術でマージンを十分に取れなかった場合に起こりやすくなります。再発したときは、あらためて広がりを画像検査で確認し、再手術や放射線治療などを状態に合わせて検討します。経過は個体差が大きいため、診察のうえでご説明します。費用も内容によって変わりますので、診察のときにご案内します。

SUPERVISED BY / 監修

このページは、南大沢どうぶつ病院 院長・獣医師 保坂 創史(日本獣医がん学会 獣医腫瘍科認定医Ⅰ種)が監修しています。

最終更新日:2026-06-25

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