DISEASE

猫の注射部位肉腫

猫の注射部位肉腫は、ワクチンや注射を受けた場所にできる軟部組織の悪性腫瘍です。首の後ろや背中、体の側面、脇腹など、注射をよくする場所にしこりとして現れます。

この腫瘍の特徴は、周囲の組織へ深く入り込みながら広がっていくことです。見た目のしこりよりも実際の広がりが大きいことが多く、手術で取り残すと同じ場所に再発しやすい性質があります。

一方で、肺やほかの臓器へ転移することは比較的少ないと考えられています。そのため、いかに最初の段階で広い範囲を含めて取りきれるかが、その後の経過を大きく左右します。

ワクチンは、命にかかわる感染症から動物たちを守るためにとても大切なものです。注射部位肉腫はまれな病気であり、過度に心配して接種をやめる必要はありません。ただ、注射をした場所にしこりが残ったときは、様子を見すぎずに相談していただくことが大切です。

猫の注射部位肉腫とは

猫の注射部位肉腫は、ワクチンやそのほかの注射をした部位にできる軟部組織の悪性腫瘍です。以前はワクチン接種との関連から呼ばれることが多かった腫瘍ですが、抗生物質や一部の薬など、ほかの注射がきっかけになることもあると考えられています。

この腫瘍は、皮膚のすぐ下から筋肉のあいだにかけて発生します。境目がはっきりしないまま、根を張るように周囲へ入り込んでいくのが特徴です。表面から触れるしこりは全体の一部にすぎず、実際にはその奥や周りへ広がっていることが少なくありません。

注射をした後に一時的に小さなしこりができること自体は、めずらしくありません。多くは自然に小さくなって消えていきます。問題になるのは、そのしこりが消えずに残り続けたり、だんだん大きくなっていく場合です。

しこりを見つけたときの目安として、3-2-1ルールという考え方があります。注射をした場所のしこりが、3か月以上残っている、大きさが2cmを超える、1か月を過ぎても大きくなり続けている、このいずれかに当てはまるときは、検査を検討したほうがよいという考え方です。すべてに当てはまる必要はなく、ひとつでも気になるときは相談していただくとよいでしょう。

猫の注射部位肉腫の症状

初期のうちは、しこりがあるだけで痛みや元気のなさが見られないことも多く、気づかれにくい病気です。日ごろから体を触って確認しておくと、変化に早く気づけます。

よく見られる症状

  • 注射をした場所(首の後ろ・背中・体側・脇腹など)にできるしこり
  • 消えずに残り続けるしこり
  • だんだん大きくなっていくしこり
  • しこりの表面が硬く、皮膚の下で動きにくい
  • 大きくなった部分の皮膚がただれる、傷になる
  • しこりが大きくなることで気にして舐める、動きをいやがる

しこりの大きさや硬さだけで、良性か悪性かを見分けることはできません。気になるしこりがあるときは、自己判断せずに一度診てもらうことをおすすめします。

猫の注射部位肉腫の診断

診断では、しこりの性質を確かめることと、腫瘍がどこまで広がっているかを把握することの両方が大切になります。ここで得た情報が、治療の方針を決める土台になります。

触診・経過確認

まず、しこりの大きさや硬さ、周りの組織との位置関係を触って確認します。あわせて、いつごろどこに注射をしたか、しこりがいつからあるか、大きさに変化があるかといった経過をうかがいます。3-2-1ルールに当てはまるかどうかも、この段階の大切な判断材料になります。

生検・病理検査

確定診断のためには、しこりの組織を採取して顕微鏡で調べる病理検査を行います。針で細胞を吸い取る方法だけでは判断がむずかしいことがあり、組織の一部を採る生検が必要になる場合があります。この検査によって、注射部位肉腫かどうか、どのような性質の腫瘍かを確認します。

画像検査(CTなど)

この腫瘍は目に見えるしこり以上に広がっていることが多いため、CTなどの画像検査で広がりの範囲を詳しく調べます。どこまで手術で取る必要があるかを見極めるうえで、画像検査は重要な役割を果たします。あわせて、転移の有無を確認するための検査を行うこともあります。

猫の注射部位肉腫の治療

治療は、腫瘍の広がりや体の状態に合わせて選びます。再発をできるだけ防ぐことを重視して、複数の方法を組み合わせることもあります。

外科手術(広範囲切除)

治療の中心になるのが手術です。この腫瘍は取り残すと再発しやすいため、しこりだけを取るのではなく、周りの正常に見える組織も広く含めて切除します。これを広範囲切除といいます。最初の手術でどれだけしっかり取りきれるかが、その後の経過に大きく関わります。画像検査で広がりを把握したうえで、計画的に手術を行うことが大切です。

放射線治療

手術だけでは取りきれない場合や、再発を防ぐ目的で、放射線治療を組み合わせることがあります。手術の前後に行うことで、残った腫瘍細胞への対策として役立つと考えられています。手術と放射線治療を組み合わせる方針は、状況に応じて検討します。

抗がん剤

腫瘍の状態によっては、抗がん剤を組み合わせることもあります。手術や放射線治療を補う形で用いられることが多く、体の状態を見ながら適応を判断します。

予後

猫の注射部位肉腫は、局所での再発が大きな課題になる腫瘍です。転移は比較的少ないものの、取り残すと同じ場所に再び現れやすい性質があります。

経過を左右する大きな要素は、早い段階で見つけて、広い範囲を含めてしっかり切除できるかどうかです。しこりが小さいうちに対応できるほど、選べる治療の幅も広がります。だからこそ、気になるしこりを見つけたときに、早めに相談していただくことがとても大切になります。

早期発見のために

この腫瘍は初期に痛みが出にくいため、日ごろの観察が早期発見につながります。難しい手技は必要なく、体をなでるついでに確認する習慣をつけていただくだけで十分です。

  • 注射をした後は、その場所にしこりが残っていないか気をつけて見る
  • 体をなでるときに、皮膚の下にしこりがないか触って確かめる
  • しこりを見つけたら、大きさや位置を記録しておく
  • しこりが3か月以上残る、大きさが2cmを超える、1か月を過ぎても大きくなり続けるときは相談する

ワクチン自体は感染症から動物たちを守る大切なものです。心配しすぎる必要はありませんが、気になるしこりがあるときは早めにご相談ください。

セカンドオピニオンについて

診断や治療方針について、ほかの獣医師の意見も聞いてみたいと感じることがあるかもしれません。セカンドオピニオンは、いま受けている治療を否定するものではなく、納得して次の一歩を選ぶための方法のひとつです。

注射部位肉腫は、最初の手術の範囲がその後の経過に関わる腫瘍です。手術の計画や放射線治療との組み合わせについて疑問があるときは、遠慮なくほかの意見を求めていただいて構いません。これまでの検査結果や画像があると、話がスムーズに進みます。

猫の注射部位肉腫でお悩みの方へ

猫の注射部位肉腫は、早い段階で見つけて広い範囲を切除できるかどうかが、その後を大きく左右する腫瘍です。注射をした場所のしこりが消えずに残っている、だんだん大きくなっている、そんなときは様子を見すぎずにご相談ください。

当院では、腫瘍科認定医による診断と治療を行っています。お気軽にご相談ください。

よくあるご質問

注射やワクチンの後にできたしこりは、様子を見ていて大丈夫ですか?

注射の後に一時的に小さなしこりができることはめずらしくなく、多くは自然に小さくなって消えていきます。ただし、しこりが3か月以上残っている、大きさが2cmを超える、1か月を過ぎても大きくなり続けている、このいずれかに当てはまるときは検査を検討したほうがよい目安とされています。ひとつでも気になるものがあれば、様子を見すぎずにご相談ください。

しこりを触っただけで、悪性かどうか分かりますか?

しこりの大きさや硬さだけでは、良性か悪性かを見分けることはできません。注射部位肉腫は表面から触れる部分より奥や周りへ広がっていることが多く、見た目の印象と実際の性質が一致しないことがあります。気になるしこりがあるときは自己判断せず、一度診せていただくことをおすすめします。

どんな検査をするのですか?

まず、しこりの大きさや硬さ、周りの組織との位置関係を触って確認し、いつどこに注射をしたか、しこりがいつからあるかといった経過をうかがいます。確定診断のためには、組織を採取して顕微鏡で調べる病理検査を行います。あわせて、CTなどの画像検査で腫瘍の広がりや転移の有無を調べることもあります。

治療にはどのような方法がありますか?

治療の中心になるのは手術です。この腫瘍は取り残すと再発しやすいため、しこりだけでなく周りの正常に見える組織も広く含めて切除する広範囲切除を行います。状況に応じて、手術に放射線治療や抗がん剤を組み合わせることもあります。腫瘍の広がりや体の状態に合わせて方針を決めていきますので、診察のうえでご説明します。

手術をしても再発しやすいと聞きました。本当ですか?

注射部位肉腫は、周囲の組織へ深く入り込みながら広がる性質があり、取り残すと同じ場所に再び現れやすい腫瘍です。一方で、肺やほかの臓器へ転移することは比較的少ないと考えられています。早い段階で見つけて広い範囲を含めてしっかり切除できるかどうかが経過を大きく左右しますが、個体差が大きいため、実際の見通しは診察のうえでご説明します。

今後、ワクチンは打たない方がよいのでしょうか?

ワクチンは、命にかかわる感染症から動物たちを守るために大切なものです。注射部位肉腫はまれな病気であり、過度に心配して接種をやめる必要はありません。接種後は注射をした場所にしこりが残っていないか気をつけて見ていただき、消えずに残るしこりに気づいたときは早めにご相談ください。

治療にかかる費用の目安はどのくらいですか?

費用は、腫瘍の広がりや必要な検査、選ぶ治療法によって変わります。手術や画像検査、病理検査などの内容に応じてご案内しますので、診察のうえでご相談ください。おおよその見通しについても、その際にご説明します。

SUPERVISED BY / 監修

このページは、南大沢どうぶつ病院 院長・獣医師 保坂 創史(日本獣医がん学会 獣医腫瘍科認定医Ⅰ種)が監修しています。

最終更新日:2026-06-25

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