「膀胱炎の治療をしているのに、血尿や頻尿がなかなか良くならない」。そんなときに見つかることがあるのが、膀胱の腫瘍です。
膀胱にできる悪性腫瘍の代表が、移行上皮癌(尿路上皮癌)です。犬に多く見られます。
症状が膀胱炎とよく似ているため、初期には気づきにくいことがあります。治りにくい、あるいはくり返す膀胱炎のような症状が続くときには、腫瘍の可能性も考えて調べていきます。
膀胱腫瘍(移行上皮癌)とは
膀胱は、腎臓でつくられた尿を一時的にためておく袋のような臓器です。その内側は、移行上皮(尿路上皮)という細胞でおおわれています。
この移行上皮から発生する悪性腫瘍が、移行上皮癌です。膀胱にできる腫瘍の中では、比較的よく見られます。
移行上皮癌は、膀胱の出口にあたる三角部という場所にできやすい傾向があります。ここは尿道につながる部分のため、腫瘍が大きくなると尿の通り道がふさがれ、おしっこが出にくくなることがあります。
周囲へしみ込むように広がる性質があり、進行すると尿道やリンパ節などに広がることもあります。
膀胱腫瘍の症状
膀胱腫瘍の症状は、膀胱炎とよく似ています。次のようなものが見られます。
- 血尿:尿に血がまじる
- 頻尿:トイレに行く回数が増える
- 排尿困難:おしっこが出にくい、時間がかかる
- 残尿感:何度も少しずつ排尿する
- 尿がまったく出ない
これらの症状は、膀胱炎や膀胱結石など、ほかの病気でもよく見られます。そのため、症状だけで腫瘍かどうかを見分けることはできません。
治療をしても良くならない、あるいはくり返し起こる膀胱炎のような症状があるときは、一度くわしく調べておくことをおすすめします。とくに、まったく尿が出ない場合は、尿道がふさがれている可能性があり、早めの対応が必要です。
膀胱腫瘍の診断
膀胱腫瘍が疑われるときは、尿の検査や画像の検査を組み合わせて調べていきます。
尿検査
尿の中に血液や炎症の反応がないかを確認します。あわせて、尿の中に腫瘍の細胞が出ていないかを調べることもあります。膀胱炎などとの見分けにも役立つ検査です。
近年では、尿を使ったBRAF遺伝子検査という方法もあります。移行上皮癌に特徴的な遺伝子の変化を尿から調べるもので、体に針を刺す必要がありません。そのため、針を刺す検査で心配される播種(腫瘍細胞が周囲に散らばること)のリスクがなく、診断の手がかりを得やすい検査です。外部の検査機関に依頼して行います。
超音波検査
おなかに超音波をあてて、膀胱の中の様子を確認します。膀胱の壁が厚くなっていないか、しこりがないか、どの位置にできているかを調べます。体への負担が少なく、腫瘍を見つけるのに役立つ検査です。
その他の検査
腫瘍の広がりや転移を調べるために、レントゲン検査やCT検査を行うことがあります。診断を確実にするための検査については、播種(腫瘍細胞が広がること)のリスクなども考えながら、方法を慎重に検討します。どの検査を行うかは、動物たちの状態に合わせてご相談しながら決めていきます。
膀胱腫瘍の治療
膀胱腫瘍の治療は、腫瘍のできた場所や広がり、全身の状態によって選びます。移行上皮癌は膀胱の出口にできやすく、手術で取りきることが難しい場合があるため、内科的な治療が中心になることが多い腫瘍です。
内科治療(消炎鎮痛剤・抗がん剤)
消炎鎮痛剤(COX阻害薬)や抗がん剤などを使い、腫瘍の進行を抑えることを目指します。症状をやわらげ、生活の質を保つことも大切な目的です。飲み薬を続けながら、定期的に経過を確認していきます。
外科手術
腫瘍が膀胱の出口から離れた場所にあるなど、切除できる位置にある場合には、外科手術を検討することがあります。ただし、できる場所によっては手術がむずかしいこともあり、適応は慎重に判断します。
その他
腫瘍によって尿の通り道がふさがれ、おしっこが出にくくなっている場合には、尿を出すための処置が必要になることがあります。たとえば、尿道にカテーテルを通して尿を出す方法があります。通り道を確保する尿道ステントという方法もありますが、対応できる施設は限られます。症状に応じた対応も含めて、動物の状態に合った方針を相談しながら進めていきます。
予後
膀胱腫瘍の経過は、腫瘍のできた場所や広がり、治療への反応によって変わってきます。
膀胱の出口にできやすく、取りきることが難しいことも多い腫瘍ですが、内科治療によって症状をやわらげ、進行を抑えられることがあります。
同じ病気でも、動物たちごとに状況は異なります。検査の結果をふまえて、見通しや治療の選択肢について丁寧にご説明します。
セカンドオピニオンについて
膀胱腫瘍は、内科治療を中心にするか、手術を検討するかなど、方針に迷うことがある病気です。ほかの獣医師の意見も聞いてみたいと考えることは自然なことです。
当院では、セカンドオピニオンにも対応しています。これまでの検査結果や画像、尿検査の記録などをお持ちいただくと、より具体的にお話しできます。今の治療を続けながら、当院の意見を参考にしていただくこともできます。
犬猫の膀胱腫瘍でお悩みの方へ
血尿や頻尿、排尿のしにくさが続くとき、その裏に膀胱腫瘍が隠れていることがあります。治りにくい、くり返す膀胱炎のような症状があるときは、早めに調べておくと安心です。
当院では、腫瘍科認定医による診断と治療を行っています。お気軽にご相談ください。
よくあるご質問
血尿や頻尿があります。膀胱炎とどう見分けるのですか?
血尿や頻尿、排尿のしにくさは、膀胱炎でも膀胱腫瘍でも起こります。症状だけで見分けることはできません。膀胱炎の治療をしても良くならない、あるいはくり返す場合には、尿検査や超音波検査で膀胱の中を調べていきます。
診断のためにどんな検査をしますか。体への負担は大きいですか?
尿検査とおなかの超音波検査が中心になります。超音波検査は体への負担が少なく、膀胱の壁の厚みやしこりの位置を確認できます。尿を使ったBRAF遺伝子検査という方法もあり、これは針を刺す必要がないため、検査による腫瘍細胞の播種を心配せずに手がかりを得られます。広がりを調べる際にはレントゲンやCTを行うこともあります。
手術で取りきることはできますか?
移行上皮癌は膀胱の出口にあたる三角部にできやすく、この場所は尿道につながるため、手術で取りきることが難しい場合があります。腫瘍が出口から離れた切除できる位置にあるときには外科手術を検討しますが、適応は場所や広がりを見て慎重に判断します。
手術が難しい場合、どんな治療になりますか?
内科治療が中心になることが多い腫瘍です。消炎鎮痛剤(COX阻害薬)や抗がん剤などの飲み薬を使い、腫瘍の進行を抑えることを目指します。症状をやわらげながら、定期的に経過を確認していきます。
おしっこがまったく出ません。急いだほうがよいですか?
尿がまったく出ない場合は、腫瘍で尿道がふさがれている可能性があり、早めの対応が必要です。まずは尿道にカテーテルを通して尿を出す処置を行います。ふさがった通り道を確保する尿道ステントという方法もありますが、対応できる施設は限られます。すぐにご相談ください。
治療でどのくらい良くなりますか。予後はどのくらいですか?
経過は腫瘍のできた場所や広がり、治療への反応によって変わります。取りきることが難しいことも多い腫瘍ですが、内科治療で症状をやわらげ、進行を抑えられることがあります。同じ病気でも動物たちごとに状況は異なりますので、検査の結果をふまえて見通しを診察のうえで丁寧にご説明します。
ほかの病院で治療中ですが、意見だけ聞くことはできますか?
はい、当院はセカンドオピニオンに対応しています。これまでの検査結果や画像、尿検査の記録などをお持ちいただくと、より具体的にお話しできます。今の治療を続けながら、当院の意見を参考にしていただくこともできます。費用については診察のうえでご案内しますので、お気軽にお問い合わせください。
SUPERVISED BY / 監修
このページは、南大沢どうぶつ病院 院長・獣医師 保坂 創史(日本獣医がん学会 獣医腫瘍科認定医Ⅰ種)が監修しています。
最終更新日:2026-06-25
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