DISEASE

犬の僧帽弁閉鎖不全症(MVD)

僧帽弁閉鎖不全症(MVD)は、犬で最も多く見られる心臓病で、特に小型犬の中高齢期に好発します。キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、チワワ、トイプードルなどで多く見られます。

どんな病気か

心臓の左心房と左心室の間にある「僧帽弁」がうまく閉じなくなり、血液が逆流してしまう病気です。進行すると心臓が拡大し、肺に水がたまる「肺水腫」やうっ血性心不全を引き起こします。初期には症状がほとんどなく、健診の聴診で「収縮期雑音」として見つかることが多い病気です。

主な症状

  • 健診などで心雑音を指摘される

  • 夜間や運動後の咳

  • 呼吸が速い・浅い

  • 運動を嫌がる、すぐ疲れる

当院での診断・治療

当院では心エコー検査により心拡大や弁の逆流量を評価し、ACVIM(アメリカ獣医内科学会)のガイドラインに基づいてステージを分類します。

特に重要なのが、心拡大が確認された段階(ACVIMステージB2)からのピモベンダン投与です。臨床研究では、この予防的治療によって心不全の発症を平均でおよそ15ヶ月遅らせられると報告されています。ただしこれはあくまで平均的な数値で、実際の効果には個体差があり、これより短い場合もあれば長い場合もあります。心不全(ステージC以降)に進行した症例でも、利尿薬などを含めた多剤併用療法によってQOLを維持する治療を行います。

僧帽弁閉鎖不全症は早期発見と適切なタイミングでの治療が予後を大きく左右します。心雑音を指摘された方、リスクの高い犬種を飼われている方は、お気軽にご相談ください。

よくあるご質問

咳が出るのは心臓のせいですか?

咳にはさまざまな原因がありますが、僧帽弁閉鎖不全症の動物たちでは、夜間や運動のあとに咳が出ることがあります。心臓が拡大して気管を圧迫したり、肺に負担がかかったりすることが関係している場合があります。ただし気管や肺そのものの病気で咳が出ていることもありますので、咳が続くようでしたら、聴診や検査で原因を確かめたうえでご説明します。

健診の聴診で心雑音を指摘されました。無症状ですが受診したほうがよいですか?

この病気は初期には症状がほとんどなく、健診の聴診で収縮期雑音として見つかることが少なくありません。症状がないうちに見つかることは、むしろ早く対応できるという意味で大切な機会になります。心エコー検査で心臓の拡大や逆流の程度を確認し、いま治療が必要な段階かどうかを判断できますので、無症状であっても一度ご相談いただくことをおすすめします。

いま治療を始めたほうがよいのか、様子を見てよいのか、どう決めるのですか?

当院では心エコー検査で心拡大や弁の逆流量を評価し、ACVIMのガイドラインに沿ってステージを分類したうえで判断します。特に、心臓の拡大が確認された段階からの予防的な内服治療が重要になります。まだ拡大が見られない段階では定期的な検査で経過を追っていくこともありますので、いまどの段階にあるかを診察のうえでご説明します。

治療を始めると、この先どのくらい進行を抑えられますか?

心臓の拡大が確認された段階からの予防的治療によって、心不全の発症を平均でおよそ15ヶ月遅らせられると報告されています。ただしこれはあくまで平均的な数値で、実際の効果には個体差があり、これより短いことも長いこともあります。心不全に進行したあとでも、内服のお薬を組み合わせて生活の質を保つ治療を続けていきますので、その時々の状態に合わせてご相談しながら進めていきます。

家庭で気をつけて見ておくとよいことはありますか?

安静にしているときの呼吸が速い、浅いといった変化は、心臓の負担を知る手がかりになります。夜間や運動のあとの咳、以前より運動を嫌がる、すぐに疲れるといった様子も、進行のサインとして参考になります。気になる変化に気づいたときは、無理をさせずに早めにご連絡ください。日ごろの様子を教えていただけると、診察の際にも役立ちます。

定期検査はどのくらいの間隔で受ければよいですか?

検査の間隔は、いまどのステージにあるか、症状があるかどうかによって変わってきます。進行の程度や治療の内容に応じて、次の検査の目安を診察のうえでご案内しますので、自己判断で間隔をあけすぎないようにしていただけると安心です。心雑音を指摘された動物たちやリスクの高い犬種では、症状がなくても定期的に心臓の状態を確認しておくことをおすすめします。

SUPERVISED BY / 監修

このページは、南大沢どうぶつ病院 副院長・獣医師 保坂 記世が監修しています。麻布大学附属動物病院の循環器科で専科研修を積み、循環器内科の診療に20年以上携わってきました。日本獣医循環器学会に所属しています。

最終更新日:2026-06-25

気になる症状は、お気軽にご相談ください

南大沢どうぶつ病院/多摩八王子動物がんクリニック