2026-09-13

犬のリンパ腫|首の下・わき・後ろ膝のリンパ節の腫れに気づいたら。症状・診断・治療の流れと通院の考え方

「なでていたら、あごの下にビー玉のようなしこりがあって」「わきと後ろ足の付け根にもかたまりがあると言われました」。犬のリンパ腫は、こうした体の表面のリンパ節の腫れで見つかることがいちばん多い病気です。

リンパ腫は、免疫を担うリンパ球ががん化する「血液のがん」で、犬の悪性腫瘍の中でも多いものの一つです。手術で取り切る病気ではなく、抗がん剤治療が中心になりますが、犬の抗がん剤治療は「ふだんの生活を続けながら」を目標に組み立てます。多くの犬で腫れが引いて元気を取り戻す「寛解」が期待でき、通院しながら過ごせる時間を延ばすことを目指す病気です。

このページでは、気づきやすい症状、診断のために行う検査、治療の考え方、そして通院と費用を考えるときの目安を、順番にお伝えします。

犬のリンパ腫とは

リンパ球は白血球の一種で、リンパ節・脾臓・肝臓・消化管・皮膚など全身に存在しています。そのリンパ球ががん化した病気がリンパ腫で、発生する場所によっていくつかのタイプに分かれます。

  • 多中心型:体の表面のリンパ節が腫れるタイプ。犬ではこのタイプが最も多くみられます
  • 消化管型:胃や腸に発生し、嘔吐や下痢、体重減少で見つかります
  • 縦隔型(じゅうかくがた):胸の中に発生し、呼吸が速くなることがあります
  • 皮膚型:皮膚の赤みやただれ、しこりとして現れます

中高齢の犬に多いといわれていますが、若い犬に発生することもあります。

犬のリンパ腫の症状

首の下・わき・後ろ膝のリンパ節の腫れ

多中心型では、体の表面にあるリンパ節が腫れてきます。飼い主さまが触って気づきやすいのは、次の場所です。

  • あごの下(下顎リンパ節)
  • 肩の前(浅頸リンパ節)
  • わきの下(腋窩リンパ節)
  • 足の付け根(鼠径リンパ節)
  • 後ろ膝の裏側(膝窩リンパ節)

左右対称に、硬めのかたまりとして触れることが多く、痛みがないことがほとんどです。痛がらないため、なでているときに偶然気づかれることがよくあります。

元気や食欲の低下、体重減少

リンパ節の腫れだけで元気なことも多い一方で、進行すると元気がなくなる、食欲が落ちる、体重が減る、発熱が続くといった全身の症状が出てきます。水をたくさん飲んでおしっこの量が増える場合は、血液中のカルシウムが上がっていることがあり、早めの受診をおすすめします。

リンパ節が腫れる病気はリンパ腫だけではありません

歯周病や皮膚炎など、感染や炎症に反応してリンパ節が腫れることもあります。腫れているからといってリンパ腫と決まるわけではありませんので、まずは検査で確かめることが大切です。

犬のリンパ腫の診断

細胞診(さいぼうしん)

腫れているリンパ節に細い針を刺して細胞を採取し、顕微鏡で観察する検査です。麻酔は不要なことが多く、動物への負担が少ない検査で、多くの場合はこの検査でリンパ腫が強く疑われます。

PCR検査(クローナリティー検査)と免疫表現型

細胞診だけでは、炎症でリンパ球が増えているのか、腫瘍として増えているのかの判断が難しいことがあります。そのときは、増えているリンパ球が同じ性質のものばかりか(単クローン性)を調べるPCR検査を行います。あわせて、リンパ腫がB細胞型かT細胞型かを調べることがあります。一般にB細胞型のほうが抗がん剤への反応が良い傾向があるといわれており、治療方針や見通しの説明に関わります。

病理組織検査

必要に応じて、リンパ節の一部または全体を切除して病理検査に出します。リンパ腫のタイプや悪性度をより正確に判断したいときに行います。

ステージ分類(病気の広がりの評価)

血液検査、胸のレントゲン検査、お腹の超音波検査で、リンパ腫がどこまで広がっているかを確認します。腫れが1か所だけなのか、全身のリンパ節に及んでいるのか、肝臓や脾臓、骨髄まで及んでいるのかでステージが決まり、あわせて元気や食欲があるかどうか(サブステージ)も見ます。治療前の全身の状態を把握しておくことは、抗がん剤を安全に使うためにも欠かせません。

犬のリンパ腫の治療の考え方

抗がん剤治療が中心になる理由

リンパ腫はリンパ球が全身をめぐる病気のため、腫れているリンパ節だけを手術で取っても、他の場所に残ったがん細胞が増えてきます。そのため、全身に効く抗がん剤治療(化学療法)が治療の中心になります。

標準的には、作用の異なる数種類の抗がん剤を組み合わせる「多剤併用化学療法」を行います。代表的なものがCHOPプロトコルと呼ばれる方法で、オンコビン(ビンクリスチン)、エンドキサン(シクロホスファミド)、アドリアシン(ドキソルビシン)、プレドニン(プレドニゾロン)を順番に組み合わせます。よりシンプルなCOPプロトコルや、通院の負担を抑えた方法もあり、犬の状態とご家族のご希望をふまえて選びます。

「寛解」という考え方

リンパ腫の治療では、「完治」ではなく「寛解(かんかい)」という言葉を使います。寛解とは、治療によって腫れが引き、検査でがん細胞が見つからなくなった状態のことです。多剤併用化学療法を行った犬の多くで寛解が得られると報告されていますが、目に見えないがん細胞が体に残っていることがあり、時間がたつと再び腫れてくる(再発)ことがあります。

治療の目標は、寛解の期間をできるだけ長く保ち、その間ふだんどおりの生活を送れるようにすることです。再発した場合も、別の抗がん剤に切り替えて再び寛解を目指す方法があります。

抗がん剤の副作用について

人の抗がん剤治療は副作用が強いというイメージがありますが、犬では生活の質を保つことを優先した量と間隔で使います。それでも、投与のあと数日は食欲が落ちる、吐く、下痢をするといった消化器症状や、白血球が減って感染しやすくなる時期が出ることがあります。毛が抜ける副作用は人ほど目立ちませんが、プードルのように毛が伸び続ける犬種では毛が薄くなることがあります。投与のたびに血液検査で白血球の数を確認し、体調に合わせてお薬の量や間隔を調整します。

治療をしない、あるいは軽い治療を選ぶこともできます

プレドニンだけで腫れを抑えて過ごす方法や、痛みや吐き気をやわらげる緩和ケアを中心にする選択もあります。積極的な抗がん剤治療に比べて寛解の期間は短くなる傾向がありますが、通院の負担を抑えられます。どの選択にも良い面と難しい面があり、正解は一つではありません。犬の年齢や持病、性格、ご家族の生活をふまえて一緒に考えます。

通院と費用の目安の考え方

通院の頻度

多剤併用化学療法では、治療のはじめの時期は週に1回程度の通院が必要になり、経過が安定してくると2週に1回、さらに間隔を空けていく流れが一般的です。全体で数か月にわたる治療になります。毎回、診察と血液検査を行い、その日の体調を確認してから投与するかどうかを判断します。プロトコルによって通院の回数と期間は変わります。

費用を考えるときの目安

金額は、選ぶプロトコル、犬の体の大きさ(抗がん剤の量は体の大きさで決まります)、検査の頻度、副作用が出たときの治療の有無によって変わるため、一律にはお伝えできません。当院では治療を始める前に、選択肢ごとの通院回数と費用の見込みをご説明し、ご家族が無理なく続けられる形を一緒に決めています。がん治療の費用の考え方はペットのがん治療費はどう決まる?、当院の費用の考え方はがん治療の費用についてをご覧ください。

猫のリンパ腫との違い

猫のリンパ腫は、リンパ節よりも消化管に発生するタイプが多く、嘔吐や下痢、体重減少で見つかることが目立ちます。診断や治療の考え方は共通する部分が多いものの、犬とは違いがあります。猫については猫のリンパ腫のページをご覧ください。

当院のリンパ腫診療

南大沢どうぶつ病院/多摩八王子動物がんクリニックでは、日本獣医がん学会の獣医腫瘍科認定医Ⅰ種である院長が、細胞診・PCR検査・ステージ評価から抗がん剤治療、緩和ケアまでを一貫して担当します。「治療をするかどうか」だけでなく、「どこまで、どのくらいの負担で」を含めてご家族と相談しながら進めます。他院で診断を受けた方のセカンドオピニオンにも対応しています。

リンパ腫のタイプによる違いはリンパ腫は「血液のがん」。種類によって治療も大きく変わる、治療の選択肢の考え方は犬猫のリンパ腫と、動物たちが自分らしく過ごすための治療の選択肢、腫瘍科の疾患ページは犬のリンパ腫(腫瘍科)もあわせてご覧ください。

よくあるご質問

犬のリンパ腫は、どんな症状で気づくことが多いですか?

最も多い多中心型では、あごの下・肩の前・わきの下・足の付け根・後ろ膝の裏にあるリンパ節が、左右対称に硬めのかたまりとして腫れてきます。痛みがないことが多く、なでているときに偶然気づかれる方がよくいらっしゃいます。進行すると元気や食欲の低下、体重減少、発熱がみられることもあります。

リンパ節が腫れていたら、必ずリンパ腫ですか?

いいえ。歯周病や皮膚炎など、感染や炎症に反応してリンパ節が腫れることもあります。腫れの原因がリンパ腫かどうかは、細い針で細胞を採る細胞診や、必要に応じたPCR検査で確かめます。腫れに気づいたら、自己判断せず早めに検査を受けることをおすすめします。

犬のリンパ腫は手術で治せますか?

リンパ腫はリンパ球が全身をめぐる病気のため、腫れているリンパ節を手術で取っても、他の場所のがん細胞が増えてきます。そのため治療の中心は、全身に効く抗がん剤治療になります。手術は、診断のためにリンパ節を採取する場合や、消化管型で腸が詰まっている場合などに限られます。

「寛解」と「完治」はどう違いますか?

寛解は、治療で腫れが引き、検査でがん細胞が見つからなくなった状態です。目に見えないがん細胞が残っていることがあり、時間がたつと再発することがあるため、リンパ腫では「完治」ではなく「寛解」という言葉を使います。治療の目標は、寛解の期間をできるだけ長く保ち、その間ふだんどおりの生活を送ることです。

抗がん剤治療の通院は、どのくらいの頻度で必要ですか?

多剤併用化学療法では、はじめの時期は週1回程度、安定してくると2週に1回と間隔を空けていくのが一般的で、全体で数か月の治療になります。毎回、診察と血液検査で体調を確認してから投与します。プロトコルによって回数や期間は変わりますので、治療を始める前に見込みをご説明します。

治療費はどのくらいかかりますか?

選ぶプロトコル、犬の体の大きさ、検査の頻度、副作用の治療の有無で変わるため、一律の金額はお伝えできません。当院では治療前に、選択肢ごとの通院回数と費用の見込みをご説明したうえで、ご家族が無理なく続けられる形を一緒に決めています。ペット保険の対象になるかは、ご加入の保険会社にご確認ください。

高齢の犬でも抗がん剤治療はできますか?

年齢だけで治療できないと決まるわけではありません。心臓や腎臓など持病の有無、体力、血液検査の結果をもとに、お薬の量や間隔を調整して行うことができます。負担の少ない方法や、プレドニンだけで腫れを抑える方法もありますので、その子に合った進め方を一緒に考えます。

SUPERVISED BY / 監修

この記事は、南大沢どうぶつ病院 院長・獣医師 保坂 創史(日本獣医がん学会 獣医腫瘍科認定医Ⅰ種)が監修しています。

公開日:2026-09-13

気になる症状は、お気軽にご相談ください

八王子・南大沢の動物病院 042-670-0733

ご予約はこちら