「うちの猫、もう15歳だけどすごく食欲があるの!」 「最近、若い頃みたいに活発に動き回るようになった」
一見、とても健康で喜ばしいことのように思えますよね。 でも、もし**「食べているのに、抱っこすると軽い(痩せてきた)」**と感じるなら、それは危険なサインかもしれません。
高齢のネコちゃんでこの症状が見られる場合、**「甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)」という病気が強く疑われます。 また、「糖尿病」や、隠れた「消化器の腫瘍」**の可能性もあります。
今回は、シニア猫ちゃんに多いこの「食べているのに痩せる」病気について、南大沢どうぶつ病院の院長、保坂がお話しします。
なぜ「食べているのに痩せる」の?
通常、食欲があれば体重は維持されるか、増えるはずです。それが減ってしまうということは、**「食べた栄養が身体に吸収されていない」か、「身体が異常なスピードでエネルギーを消費している」**かのどちらかです。
「年のせい」で片付けてしまうと、心臓や腎臓に大きな負担をかけ続けてしまいます。
最も疑うべきは「甲状腺機能亢進症」
喉にある「甲状腺」からホルモンが出すぎてしまう病気です。 わかりやすく言うと、**「身体のエンジンが常にフルスロットルで暴走している状態」**です。
エネルギーを激しく消費するため、いくら食べても痩せていきます。また、常に興奮状態になるため、以下のような変化が見られます。
- 目がランランとして、攻撃的になる(性格が変わった?)
- 夜鳴きをする、落ち着きがない
- 毛並みが悪くなる(バサバサする)
- 水をたくさん飲み、おしっこが増える
- 嘔吐や下痢が増える
飼い主様が「元気になった」と勘違いしやすいのが、この病気の怖いところです。
「糖尿病」や「腎臓病」の併発も
もう一つ疑うべきは糖尿病です。インスリンがうまく働かず、食べた糖分をエネルギーとして使えないため、身体は筋肉や脂肪を分解してエネルギーを作ろうとします。
また、シニア猫ちゃんは**「慢性腎臓病」**を持っていることが非常に多く、甲状腺の病気が腎臓の悪化を隠してしまっているケースもあります。
「血液検査」と「ワンにゃんドック」で全身チェックを
「甲状腺」か「糖尿病」か、それとも「腎臓」も悪いのか。 シニア期に入ったら、特定の病気だけを疑うのではなく、全身の状態を把握することが長生きの秘訣です。
当院では、飼い主様のご希望やネコちゃんの性格に合わせて、2つのコースをご提案しています。
1.まずは手軽に調べたい方へ:血液検査
採血のみで、甲状腺ホルモン(T4)や血糖値、肝臓・腎臓の数値をチェックします。 「病院が苦手ですぐに終わらせたい」というネコちゃんにおすすめです。
2.しっかり全身を診ておきたい方へ:ワンにゃんドック
血液検査に加え、レントゲン、超音波(エコー)、尿検査などをセットにした、当院オリジナルの健康診断コースです。 「食べているのに痩せる」原因が、甲状腺なのか、お腹の中の腫瘍なのか、あるいは心臓病が隠れているのか、一度に詳しく調べることができます。
「高血圧」という隠れた爆弾
甲状腺の病気や腎臓病の子は、高血圧を併発していることが非常に多いです。 高血圧を放置すると、ある日突然、網膜剥離を起こして目が見えなくなったり、心臓に致命的なダメージを与えたりします。
当院では、健康診断の際に**「血圧測定」**も重視しています。動物用の血圧計で、痛みなく測ることができますのでご安心ください。
治療で「穏やかな日常」を取り戻す
もし甲状腺機能亢進症だった場合、お薬でホルモンの量を調整したり、専用の療法食を使ったりすることで治療可能です。
治療を始めると、憑き物が落ちたように穏やかな顔つきに戻り、体重も安定してきます。「やっぱりあのハイテンションは、しんどかったんだね」と気づく飼い主様も多いです。
「よく食べるから安心」ではなく、「食べているのに痩せるのは変だな?」と思ったら。 そのカンは当たっています。まずは健康診断で、今の身体の状態を正しく知ることから始めましょう。