Lump

犬猫の体表部のしこり

―  腫瘍専門医が解説する「正しい考え方」と診断・治療 ―

南大沢どうぶつ病院/多摩八王子動物がんクリニック

体表部の「しこり」とは

犬や猫の体表部に触れる「しこり」は、皮膚、皮下組織、筋膜、筋肉、リンパ節など、さまざまな組織を発生母地として生じます。
その正体は、炎症や嚢胞といった非腫瘍性病変から、良性腫瘍、悪性腫瘍、さらには他臓器からの転移性腫瘍まで多岐にわたります。
重要なのは、「見た目」「大きさ」「触った感じ」だけで正確な判断はできないという点です。
小さく目立たないしこりの中に、治療方針を大きく左右する腫瘍が隠れていることも少なくありません。

しこりの主な分類

体表部のしこりは、大きく以下に分類されます。

  • 非腫瘍性病変(炎症、嚢胞、膿瘍、外傷後変化など)
  • 良性腫瘍(脂肪腫、乳頭腫など)
  • 悪性腫瘍(肥満細胞腫、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、悪性黒色腫など)
  • 転移性腫瘍(他臓器のがんから体表へ転移したもの)

同じ「しこり」に見えても、治療の考え方は大きく異なります。

犬

見た目だけでは判断できない理由

体表部腫瘍の中には、初期には柔らかく、可動性があり、一見すると良性に見えるものも存在します。
特に肥満細胞腫は、外見や触診だけでは判断が困難な代表的腫瘍です。
一方で、硬く大きなしこりが良性であるケースもあり、「触った感じ」は診断の決め手にはなりません。

正しい診断の第一歩:細胞診検査

当院では、体表部のしこりに対して細胞診検査を積極的に行っています。
細い注射針で細胞を採取し、腫瘍性か非腫瘍性か、悪性が疑われるかどうかを評価します。
多くの場合、鎮静や麻酔は不要で、短時間かつ低侵襲に実施できます。
この検査結果は、その後の治療方針を考えるうえで極めて重要な情報となります。

顕微鏡

外科手術が必要な場合

腫瘍と診断された場合でも、すぐに切除すべきかどうかは慎重に判断します。

腫瘍の種類、悪性度、大きさ、発生部位、進行度、年齢や全身状態を総合的に評価し、最適なタイミングと術式を検討します。

特に悪性腫瘍では、「最初の手術」が予後を大きく左右するため、切除範囲や追加治療を見据えた計画が重要です。

手術室

腫瘍専門医による治療の強み

南大沢どうぶつ病院/多摩八王子動物がんクリニックでは、日本獣医がん学会1種認定医が診療を担当しています。
診断から治療、術後管理まで一貫して腫瘍学的視点で評価し、病理検査結果を踏まえた治療戦略を立案します。
必要に応じて、化学療法や補助治療も含めた包括的な治療をご提案します。

飼い主さまへ

体表部のしこりに気づいたとき、「様子を見る」前に「評価する」ことが重要です。
早期に正確な情報を得ることで、治療の選択肢を広く保つことができます。
気になる変化があれば、お早めにご相談ください。

南大沢どうぶつ病院院長 保坂創史

院長の保坂創史は2000年に獣医師免許を取得。大学附属病院での研修・研究と一次診療の両方に長く携わってきました。
2004年に南大沢どうぶつ病院を開業後も腫瘍を中心とした専門診療と研究を継続し、治療を一方的に決めるのではなく、ご家族と一緒に治療方針を考える医療を大切にしています。
院長 保坂創史