「健康診断の結果、肝臓の数値が高いって言われたんですけど…」「ALTが3桁って書いてあって、不安で」。元気に過ごしている子の血液検査で、突然肝酵素の上昇を指摘される。よくあるご相談です。
先に全体像をお伝えすると、犬猫の肝酵素が上がる原因は大きく3つに分けられます。①慢性肝炎や胆泥症、肝臓の腫瘍など肝臓そのものの病気、②クッシング症候群や糖尿病、膵炎、心臓病、お薬の影響など肝臓以外から肝臓に負担がかかっているもの、③食事の変化や軽い胃腸炎のあとの一過性の変化です。どれに当たるかは数値だけでは決まらず、再検査と腹部超音波検査で絞り込んでいきます。
それは、必ずしもすぐに重い病気というわけではありません。ただ、放っておいてよい数値でもないことが多いのです。何を考え、どう動けばよいのかを整理してみましょう。
肝酵素ってそもそも何?
ALT・ALP・GGTそれぞれの意味
肝酵素にはいくつか種類があります。ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)は肝臓の細胞が傷んだときに上がります。
ALP(アルカリフォスファターゼ)は胆汁の流れが滞ったときやステロイドホルモンの影響で上がります。
GGT(ガンマGTP)も胆道系の指標です。
数値だけで病気は決まらない
酵素はあくまで「肝臓に何かが起きているかも」というサインです。原因は肝臓そのものとは限りません。
肝酵素が上がる主な原因
原因①:肝臓そのものの病気
慢性肝炎、肝臓の腫瘍、胆泥症、胆嚢粘液嚢腫などです。
原因②:肝臓以外からの影響
クッシング症候群(副腎の病気)、糖尿病、膵炎、心臓病、お薬の副作用など、別の臓器の病気が肝臓に影響することもよくあります。
原因③:一過性の変化
食事内容の変化や軽い消化器症状のあとに一時的に上がっていることもあります。
次に何をするか
まずは再検査と問診
1〜2週間あけて再検査をし、生活背景と合わせて原因を絞り込みます。
腹部超音波検査が有用
肝臓の構造、胆嚢の中身、副腎の大きさまで確認できます。当院では腹部超音波を診療の中心に据えています。
必要に応じて精密検査
胆汁酸検査、ホルモン検査、細胞診や生検まで段階的に進めていきます。
当院でできること
当院は腹腔鏡(ふくくうきょう)下生検を含む、肝臓の精密検査が可能です。「数値が高いから、すぐ強いお薬」ではなく、原因に合わせた対応をご提案いたします。
一緒に決めていきましょう
肝酵素の上昇は、ていねいに原因を追っていけば、対応できることが多い変化です。「様子を見る」のか「踏み込んで調べる」のか、ご家族の価値観も含めて一緒に考えていきましょう。
健康診断の受け方については健康診断のページも、ご相談・ご予約はネット予約をご利用ください。
よくあるご質問
肝酵素とは何ですか?
肝臓や胆管の細胞に含まれる酵素で、細胞が傷んだり胆汁の流れが滞ったりすると血液中に増えてきます。血液検査で測るのはおもにALT・ALP・GGTで、「肝臓に何かが起きているかもしれない」というサインとして使います。酵素の値そのものが肝臓の働きの良し悪しを表しているわけではありません。
ALTとALPは何が違いますか?
ALTは肝臓の細胞が傷んだときに上がる酵素で、ALPは胆汁の流れが滞ったときやステロイドホルモンの影響で上がる酵素です。どちらが、どのくらい上がっているかの組み合わせで、肝臓そのものの病気なのか、クッシング症候群など肝臓以外の影響なのかを考える手がかりにします。
肝酵素上昇の原因で多いものは何ですか?
肝臓そのものの病気(慢性肝炎・胆泥症・胆嚢粘液嚢腫・肝臓の腫瘍など)、肝臓以外の病気の影響(クッシング症候群・糖尿病・膵炎・心臓病・お薬の副作用など)、食事の変化や軽い胃腸炎のあとの一過性の変化の3つに分けて考えます。どれが多いかは年齢や犬種・猫種、体調によって変わるため、再検査と腹部超音波検査で絞り込みます。
元気で食欲もあります。様子を見てもいいですか?
元気な子でも肝酵素が上がっていることはよくあり、すぐに重い病気と決まるわけではありません。ただ、放っておいてよい数値でもないことが多いため、1〜2週間あけて再検査をおすすめします。再検査でも高いままなら、腹部超音波検査で肝臓や胆嚢、副腎の状態を確認し、原因に応じた対応を考えます。
数値がどのくらいなら心配ですか?
数値の高さだけで病気の重さは決まりません。基準値の何倍か、どの酵素が上がっているか、再検査でも続いているか、元気や食欲の変化があるかを合わせて判断します。高くても一過性のこともあれば、わずかな上昇でも背景に病気が隠れていることもありますので、結果はご家族と一緒に読み解いていきます。
食事やサプリメントで下がりますか?
原因によります。食事の変化や軽い胃腸炎のあとの一過性の上昇なら自然に戻ることがありますが、クッシング症候群や胆嚢の病気など原因が別にある場合は、食事やサプリメントだけでは解決しません。「数値が高いから、すぐ強いお薬」ではなく、まず原因を絞り込んでから、食事・お薬・経過観察のどれが合うかを決めることをおすすめします。
SUPERVISED BY / 監修
この記事は、南大沢どうぶつ病院 院長・獣医師 保坂 創史(日本獣医がん学会 獣医腫瘍科認定医Ⅰ種)が監修しています。
公開日:2026-05-11 更新日:2026-09-13