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体に「しこり」を見つけたら。様子見でいいの?腫瘍科認定医が教える「待ってはいけない」理由

「ブラッシングをしていたら、皮膚にポチッとしたものがあった」 「撫でていたら、皮膚の下にコリコリしたものが触れる」

ワンちゃん・ネコちゃんの体に「しこり」を見つけた時、ドキッとしますよね。 でも、その後にこう思っていませんか?

「まだ小さいし、痛がってもいないから、もう少し大きくなったら病院に行こう」

実は、この「様子見」が、腫瘍科医として一番怖いことなのです。

今回は、日本獣医がん学会 認定医Ⅰ種を持つ院長の保坂が、しこりの正体と、早期発見だけが守れる「選択肢」についてお話しします。

ブラッシングされるいぬ

「小さければ大丈夫」は大間違い

「小さいから良性」「大きいから悪性」というルールは、残念ながらがんの世界にはありません。 米粒くらいの大きさでも、非常に悪性度が高く、全身に転移してしまうがんは存在します。

逆に、どんなに大きくても良性の脂肪の塊(脂肪腫)であることもあります。 つまり、**「見た目や大きさだけで、良性か悪性かを判断することは、獣医師でも不可能」**なのです。

恐怖の詐欺師「肥満細胞腫(ひまんさいぼうしゅ)」

特に犬の皮膚がんで恐ろしいのが**「肥満細胞腫」**です。 このがんは「偉大なる詐欺師(Great Imitator)」と呼ばれ、見た目がコロコロ変わります。

  • ただの虫刺されのように赤くなったり
  • イボのように見えたり
  • 脂肪の塊のように柔らかかったり
  • 昨日は大きかったのに、今日は小さくなっていたり

「あ、小さくなったから治ったんだ」と油断させておいて、水面下で進行するのがこのがんの特徴です。だからこそ、「様子見」は禁物なのです。

検査は「注射針」一本で終わります

「検査というと、大掛かりな手術で組織を取るの?」と不安になるかもしれません。 当院で行う最初の検査(細胞診)は、とてもシンプルです。

細胞診(FNA:細針吸引生検)の流れ

  1. しこりに、採血で使うような細い針をチクッと刺します。
  2. 針の中に細胞を吸い取ります。
  3. 顕微鏡でその細胞を観察します。

ほとんどの場合、麻酔は不要で、痛みもワクチンの注射と同じくらいです。その日のうちに「悪い顔をした細胞がいるかどうか」の当たりをつけることができます。

早く見つければ「治る」だけじゃない

早期発見のメリットは「治る確率が上がる」だけではありません。 **「治療の負担が圧倒的に軽くなる」**ことが最大のメリットです。

早期発見なら

局所麻酔や小さな手術で、日帰りで終わるかもしれません。

進行してからなら

大きく皮膚を切除したり、断脚(足を切断)したり、抗がん剤が必要になったりと、治療が大掛かりになります。

「あの時、針を刺しておけばよかった」と後悔してほしくないのです。

「がん」と診断されても、終わりではありません

もし検査の結果が悪性だったとしても、諦めないでください。 当院は**「腫瘍科認定医」**が在籍する病院です。

手術で取り切るのか、お薬で進行を抑えるのか、あるいは痛みを和らげるケア(緩和ケア)を選ぶのか。 最新の知識に基づいた、たくさんの引き出し(選択肢)を持っています。

「しこりかな?」と思ったら、サイズを測る前に、まずはご予約を。 「ただの脂肪でした!よかったですね!」と言わせていただくことが、私たちの一番の願いです。

南大沢どうぶつ病院 院長・腫瘍科認定医Ⅰ種:保坂 創史

(八王子市・多摩市・南大沢エリアの動物病院)

南大沢どうぶつ病院院長保坂 創史
院長・腫瘍科認定医Ⅰ種:保坂 創史