「最近、水のお皿を補充する回数が増えた気がする」 「ペットシーツがずっしりと重くなった」 「猫砂の固まりが、以前より明らかに大きい」
もし、ワンちゃん・ネコちゃんにこのような変化が見られたら、それは単なる「喉が渇いているだけ」ではないかもしれません。
水をたくさん飲み、おしっこがたくさん出る状態を専門用語で**「多飲多尿(たいんたにょう)」**と呼びます。これは、糖尿病や腎臓病、あるいはホルモンの病気など、身体からの「助けて」のサインであることが非常に多いのです。
今回は、飼い主様が自宅でチェックできる基準と、特に注意すべき病気について、南大沢どうぶつ病院の院長、保坂がお話しします。
どのくらい飲んだら「飲み過ぎ」?(セルフチェック)
「なんとなく増えた」では判断が難しいと思います。獣医学的には、明確な基準があります。
- 注意レベル:体重1kgあたり 60ml以上
- 危険レベル(病的):体重1kgあたり 100ml以上
例えば、体重5kgのワンちゃん・ネコちゃんの場合… 1日に300ml(コップ1杯半くらい)飲んでいたら「怪しいな」、500ml(ペットボトル1本分)飲んでいたら「明らかに病気の可能性が高い」と判断します。
「おしっこの色」も見てあげてください 量を測るのが難しい場合は、おしっこの色を見てください。健康な時は黄色ですが、多飲多尿の場合は**「水のように色が薄い」**のが特徴です。
なぜ、たくさん水を飲むの?
多くの場合、「喉が渇くから飲む」のではなく、**「おしっこが出すぎて身体が脱水してしまうから、慌てて飲んでいる」**という状態です。
腎臓などの機能が落ちておしっこを濃縮できなくなったり、ホルモンの異常で水分を留めておけなくなったりすることで、身体から水分がどんどん逃げてしまっているのです。
犬と猫、それぞれ疑うべき病気
多飲多尿の原因は様々ですが、代表的なものを挙げます。中には緊急手術が必要な命に関わる病気も含まれています。
犬の場合
子宮蓄膿症(しきゅうちくのうしょう)<緊急>
避妊手術をしていない女の子で、生理(ヒート)が終わって1〜2ヶ月後に多飲多尿が見られたら、最も警戒すべき病気です。子宮に膿が溜まり、放置すると命を落とします。
危険なサイン
陰部から膿が出る、お腹が張っている、元気がない、熱がある。
対応
様子を見ずに、すぐに病院へ来てください。
糖尿病
食欲はあるのにどんどん痩せていくのが特徴です。
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
お腹がポッコリ膨らむ、皮膚が薄くなる、毛が抜けるなどの症状が出ます。高齢のワンちゃんに多いホルモンの病気です。
猫の場合
慢性腎臓病
高齢のネコちゃんの死因の上位を占めます。初期症状として「お水をよく飲む」が現れます。腎臓は一度壊れると元に戻らないため、早期発見して進行を遅らせることが非常に重要です。
甲状腺機能亢進症
シニア猫ちゃんで「すごく元気で食欲もあるのに、なぜか痩せていく」場合はこの病気を疑います。攻撃的になったり、夜鳴きが増えたりすることもあります。
糖尿病
肥満気味のネコちゃんは特にリスクが高いです。
病院に行く時のポイント
「水をよく飲むかも」と思ったら、可能であれば以下の情報をメモしてご来院いただけると、診断がスムーズです。
1日の飲水量
ペットボトルなどを使って、24時間でどれくらい減ったか測ってみてください。
おしっこを持参
清潔な容器に入れてお持ちいただければ、すぐに尿検査ができます(採れない場合は病院で採尿しますのでご安心ください)。
その他の変化
食欲、体重の変化、元気があるかどうか。
怖がらずに、まずは検査を
当院では、尿検査、血液検査、そして超音波検査(エコー)を用いて、内臓の状態を詳しくチェックします。特に超音波検査は痛みもなく、お腹の中の様子(腎臓の形や子宮の状態など)をリアルタイムで確認できるため、早期発見に非常に有効です。
「ただの老化かな?」と思って見過ごしてしまうことが、一番のリスクです。
病気が見つかることは怖いかもしれませんが、早く見つければ、食事療法やお薬でコントロールし、穏やかな時間を長く過ごせる可能性が高まります。
「お水の減りが早いな」と感じたら、まずは相談にいらしてください。一緒にベストな方法を考えましょう。
ペットボトルなどを使って、24時間でどれくらい減ったか測ってみてください。